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一歩ずつ、弱々しい足取りながらも、カイルは前へと進む。
目の前の魔法陣からは溢れんばかりの魔力があるものの、それを自分の魔力として取り込むことも出来ない。
魔法が使えない身となり、頼みの綱である魔術も満足に使うことが出来ない。
失った血は、未だ溜まったまま乾いていないだろう。
肉体が、限界のその先を求めたことへの代償を要求してくる。
左目は最早使い物にならず、濁りきったその目は光を通さない。
でも。
それでも。
カイルを止める要因には何一つならない。
守りたいものがあるから。
守りたいものを見付けたから。
前へと進む。
誰に強制されるわけでもなく、その道を自分で選ぶ。
「……龍神流・終式¨神殺(カミゴロシ)¨」
その手に武器は、ない。
名を言わなければ、否、言うからこそ出せる技。
それはもともと無刀の流派だった……わけではない。
だが、それでも使う。
それが、自分で決めた道だから。
雷帝としての役割だからでも、義務だからでもない。
それが彼を、カイル・アストール突き動かしている全てだった。
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