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「アルスまで俺の事見捨てるのか? カイル!!」
唯一とも言える助け船を求めてカイルの名を呼ぶが、返ってきた答えはイルの思慮を軽く越えていたもので、聞き返さずにはいられなかった。
「本当に助けていいのか?」
「……え?」
「もっと罵ってほしそうに見えたから、助けていいのかって聞いたんだ」
聞き返した瞬間、強烈な後悔に襲われるイル。
言われたことを理解している途中なのか、しばらくそのままの状態で固まってしまう。
「あんたドMなの? ……気持ちわる」
「そこ!! 小さい声で気持ちわるって言うな!!」
我に帰るや否や、ぼそぼそと話すキティに向かって聞き逃さなかったことを強調すりかのように声を張り上げる。
しかし声に出した途端にイルは口を閉じてしまう。
先程からずっと視線を外しつづけていたアルスとばっちり眼が合ったからである。
「趣味は人それぞれだけどな……あんまり大きい声で言わない方がいいぞ」
「勝手な想像を押し付けるな~!!」
少しでもアルスの発言に期待をしていたのだろう。
今日一日だけで何度目かになるイルの大声が一際辺りに響き渡った。
いやがおうでも聞こえてしまうイルの声に、周りの人達も苦笑いを浮かべるしかなかった。
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