23116人が本棚に入れています
本棚に追加
周りを見渡すイルだが、そこは寮の部屋の中。
数秒の内に見つけると、嫌な汗を大量にかきながらも精一杯の笑顔で言葉をかける。
「よ、よう」
精一杯の笑顔での一言。
それがイルに出来る最後の抵抗だったのだろう。
その顔はまだ完全には諦めてはいなかった。
少しでも罰が軽くなるようにという切ない希望を胸に秘めながらカイルの次の言葉を待つ。
「奴隷決定な」
「そんな……こんな簡単に…」
「そんな事どうでもいいから、温かいうちにご飯を食べましょ」
イルの希望が潰えたことは、その笑顔と立てた親指を突き出すカイルの姿が物語っていた。
崩れさるイルを襲うのは、奴隷という苛酷な運命だけではなかった。キティが言葉を遮って話しを進めだしていたのだ。
「どうでもいいって、それはいい過ぎだろ?」
「何をそんなに騒ぐ必要があるのよ?」
イルが騒いでいる理由が全く分からないといった様子で、キティは不思議そうに首を傾げていた。
最初のコメントを投稿しよう!