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「アルス言ってやれ。奴隷なんか現代の世の中には存在しないってな!!」
カイルと目を合わせながら高らかに叫ぶイル。
勝ちを確信している表情がしばらく続くが、いつまで経っても返って来ない返事を不審に思い、ゆっくりとその場所に目をやる。
「人生は何事も経験だと思うぞ」
「が、頑張ってくださいね」
「俺の味方は!?」
「クズがうるさい!」
叫び声を上げてはみるものの、静かに話すキティの一言に一蹴され膝をついてうなだれてしまう。
「バカからクズに…」
「うるさいクズよりも、雑草の方が酸素を出すだけマシだって話、聞いた事ある?」
「……すみません」
驚くほど冷たい台詞が平然と飛び交っている中、自業自得とはいえ軽くあしらわれつづけるイルの姿が哀れに思えたのだろう。少しだけ助け船を出そうと、口を開いていた。
「冷めないうちに食べようか?」
たった一言だったが、美味しそうな湯気が立ちのぼる料理を目の前にしていたことを思い出させるには十分過ぎる一言だった。
「いただきます!」
礼儀といえば礼儀だが、食事の前の癖とさえ言える言葉を皆で言うことで、一斉に料理に箸をのばしていった。
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