1章 プロローグ

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1 戦慄の儀式 漆黒の暗闇の中に、一人の少女が、携帯の液晶画面を熱心にのぞきこみながら、座り込んでいる。 彼女はいったい何をそんなに熱心に見ているのだろうか。 横からのぞきこんでみると、その液晶画面には何か不思議な図形が映し出されていた。 上下逆向きの二つの三角形を組み合わせたような記号が二重の円の中に描かれている。 いわゆる魔法陣と呼ばれる図形だ。 黒魔術の儀式等でひんぱんに用いられ、術者の術力を増すとも、召還した悪魔や悪霊から術者の身を守るとも、言われている。 そうしていると、やがてその魔法陣が輝きを放ち始めた。 それは人を不安に陥(おとしい)れるようなギラギラとした異様な輝きだった。 そして、その輝きはしだいにその強さを増していく。 やがて、辺り一面に、その輝きが満ち溢(あふ)れた、その時、何か、黒い霧のようなものが、携帯の液晶画面から、モクモクと立ち昇り始めた。 少女が、驚いたようすで、口に手を当て、大きく目を見開く。 そうしていると、そのうち、その黒い霧は、天井近くまで立ち昇って、しだいに人の形を取り始めた。
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