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2 悪魔降臨
仮面の黒魔術師は、天に向って大きくその両手を広げると、何やらブツブツと呪文を唱え始めた。
すぐに彼女の胸元に吊るされたルビーがギラギラと人の不安を掻(か)き立てるような異様な輝きを放ち始める。
それから、さらに、まるで、それに呼応するかのように、少女の携帯の液晶画面に映し出されたあの魔法陣が、再び、燦然(さんぜん)と輝き始めた。
しだいに高まりゆく仮面の黒魔術師の呪文の詠唱。
やがて、それが最高潮に達した、まさに、その時だった。
身も凍り付くように冷たく、そして、生臭い悪臭を帯びた、一陣の風が部屋の中を吹き抜けていった。
少女が反射的にブルブルっと身震う。
「何?」
少女は、酷く怯(おび)えたようすでキョロキョロと辺りを見渡ながら、続けた。
「いったい何なの?」
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