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さようなら。
それが、俺の聞いた、彼女の最初で最後の言葉。
煌びやかなシャンデリアが輝く一室で。
彼女は、言葉を発した。
それを聞いたとき、俺は喜びと悲しみに打ち震えた。
胸元に刺さった短剣の痛みすら忘れるほど、歓喜した。狂喜した。
世界が一気に色付いた。
そんな気が……したのだ。
彼女の口から赤い液体が零れる。
そして、俺の口からも赤い液体が零れる。
赤と赤は混ざり合い、朱になる。
朱は分離して、赤と赤になる。
俺は、慌てて倒れゆく彼女の躯を支えた。
しかし、一緒に倒れてしまう。
手にした彼女の体から、命が零れていくのが分かった。
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