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初めて園山先生と話してから一週間が過ぎようとしていたが、私は自分の目で確かに見たはずの光景をどうしても信じられず、あれは夢だったのだと何度も言い聞かせていた。 私はあの日、学校にプリントを忘れてきた。けれどそれに気付いたのは翌日の準備の再確認をしている午後九時頃で、学校へ取りに行くことを諦めた。 あるいは、あり得ないことだが単に宿題の存在を忘れていたでもいい。とにかく私は何も見なかったのだ。 私が知っているのは、廊下を歩くだけで周りが騒がしくなるほど生徒たちに慕われている、聖職者の園山先生。 「中村ぁ、次の授業でお前指すからな」 「嘘でしょ?!あたしが算数苦手だって知ってるくせに」 「園山先生はアキに苦手を克服してもらいたいんだよ」 「おー。黒田はよく解ってるね」
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