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私は園山先生という蜜に群がる蜂ではない。他の子たちからすれば甘く誘惑するそれも、私にとっては危険な毒でしかなかった。 一度吸ったら抜け出せない。解っているからこそ、私は彼に深入りしないことを固く誓った。 一ヶ月が過ぎても、私は園山先生が担任であることを忘れるほどに全く関わろうとしなかった。 昼休みにクラス中が先生とのドッジボールや鬼ごっこで笑顔を振りまいているとき、私は図書室で本を読んでいた。 帰りに一人ずつ手渡しで返される日記帳に書かれたコメントを嬉しそうに見ている女子を後目に、ノートを開きもせずに鞄へしまった。 園山先生も余計な声かけをすることはなく、当たり障りのない私の日記に当たり障りのない返事をくれた。 このまま早く卒業になればいい。切な私の願いは六月の半ば頃、脆くも崩れ去ることになる。
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