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私が初めてそれを見たのは一年以上前のことだった。 明日提出しなければならない宿題のプリントを忘れてしまい、放課後、一人学校へと行った。 下校時刻をとうに過ぎてはいたが、校庭ではまだ幾人かの生徒が遊んでいるし職員室には教師もいるので、昼間の喧噪が消えた校舎内にも特別恐怖心を抱くことはなかった。 それでも誰もいない廊下は酷(ひど)く静まり返り、上履きが廊下を擦る音が妙に響く。 滅多に来ることのない放課後の学校は不思議な高揚感を与え、プリントを忘れた愚かさや早く家に帰り宿題を済ませなければならない焦燥感も消え、一歩ずつ静かに廊下を踏み締めながら教室へと向かった。
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