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結局プリントを持ち帰るのを忘れてしまった私は、翌日、朝早くに学校へ来て、誰もいない教室で問題を解いていた。 昨夜、家に帰ってからもあの光景が頭から焼き付いて離れてくれず、初めて就寝時間が深夜一時を越えた。ご飯を食べ、風呂に入っていても浮かんできた場面を掻き消すように、一心に鉛筆を動かす。 「あれ、君、早いね」 だから、そう声がして顔を上げたとき、私の心臓は大きく跳ねた。扉に手を掛けて私を見るのは誰でもない、園山先生だったのだ。 「宿題のプリント……昨日、学校に忘れちゃって」 平静を装い紡ぎ出す言葉を聞くと、先生は教室へ入り、私の机の前まできてしゃがむ。 教師に興味を示さない私は学年集会でも下を向いており、初めて彼の顔を間近で見た。
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