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どしゃ降りの雨が、春の心地良い空気をあっと言う間に居心地の悪いものにさせた。 傘をさしているのに衣服や髪を冷たい雨が濡らして、僕の身体に張りついた。 安芸が僕の前から忽然と姿を消したのも、ちょうどこんな雨の日だった。 何処かで安芸が泣いているような気がして、僕は気が気では無かった。 そんな憂鬱さを胸に秘めて、僕は一週間ぶりに例の喫茶店へと訪れていた。 本当は翌日から毎日でも通いたい気持ちだったが、それは何となく気が引けたのだ。 三日程の余白でも良かったのかも知れないが、一週間空けた。 元々、週一回くらいのペースでこの店に訪れていたので何ら不自然では無かった。
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