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次第に寒く凍えてしまいそうな冬が終わり、暖かい春のそよ風が僕の身体を擦り抜けた。
心地良いその風はアスファルトでさえ、うたた寝出来そうな程だ。
僕は、何故だが安芸を思い出していた。
安芸とは一度も春と言う季節を過ごしたことはない。
春風が少し秋風と似た雰囲気を持つせいか。
僕は安芸とこの季節を共にしたような気になる。
晴天の空が少しずつ夕陽に包まれるその光景は僕の目にも心地良い。
少しずつ真っ青な空の中に混じる橙が。藍色が。
感傷に浸るには十分過ぎる条件を兼ね揃えている。
僕は窓際に腰を下ろし缶ビール片手に安芸を思い出していた。
真ん丸い大きな瞳。
少し低い鼻。
厚めの柔らかい唇。
真っ白な肌にスラッとした背丈。
童顔な彼女にはアンバランスな体型だが僕は嫌いじゃない。
彼女の肌は柔らかく滑らかでまるで春の妖精のようだ。
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