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「いえ、雨が降ってるものですから何となくです。」
僕は笑って誤魔化した。
「そうですか。雨もたまにはいいもんですよ。」
「ほぉ。それは例えば、どう言った時にですか?」
「汚れた街の空や大地を綺麗に洗い流してくれる。だから翌日の空にはキラキラと輝く星が見える。」
なるほどと僕は思った。
そんなことを今まで考えたことも無かったのだ。
「それにね、泣きたくなった私の代わりに空が涙を流してくれているような気がしてね。」
男は皆、意外にロマンチストなのだ。
僕は未だに運命だとかそう言う類の物を信じるし、マスターも例外では無いだろう。
僕はマスターの言った事の意味が分からなくも無かった。
雨には雨の寂しさだとか儚さがあるのかもしれない。
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