━2━

20/22
前へ
/52ページ
次へ
桜も散り、雨ばかりが続いていた。 窓ガラスには雨雫が打ちつけられては下へと流れ落ちていた。 僕の代わりに空が泣いていた。 直子も泣いていた。 僕は泣いている直子を抱き寄せた。 「何かあったの?」 「出逢った頃から思ってた。あなたはいつも私を通して誰かを見てる。それでも構わないって思ってた。あなたが…純が好きだから。それでも構わないって…。」 直子が声を押し殺そうと涙を堪えようとしている。 その努力も虚しく悲痛の声が部屋中に響き渡る。 僕は直子の髪を撫でた。 大丈夫だよ。心配しないで。 そんな意味を込めて。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加