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プロローグ
永い永い時間を経て。
今一度、見つける事が出来た。
キラキラ光る、眩しい命。
軽々しく動ける立場ではないと、重々承知している。
永い時を耐えてきた。
これからも耐え続けるはずだった。
だが、もう自分は知ってしまっている。
手を伸ばせば、届く事を。
触れる事が出来るという事を。
一度覚えた願望は、まるで飢えた喉の渇きに似て、癒される事はなかった。
日ごと募り続ける渇きを癒したくて。
初めて自ら『檻』を出た。
立場を忘れた訳では無かったが、膨れ上がった渇きを制御する術を知らなくて。
これ以上耐える事など出来なくて。
後戻りは出来ない。
理解の上で、立ち上がる。
眼下に広がる町並みへと、踏み出した。
振り返る事はしなかった。
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