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捜索開始
緋桜は町中で喧嘩?に乱入しようとした青年,『沖田総司』と相部屋になった。
「此処の生活で何か不自由があれば僕等隊長か土方さん・・さっきの人に言うといいよ。あ,後出かける時は誰かと一緒にね?貴方随分世間知らずみたいだし」
沖田は笑顔で気さくに緋桜に話しかける。
しかし緋桜は気付いていた。眼は見えずとも沖田が自分に向ける視線に鋭さが混じっていることに。
(大方監視役,といった所かの?)
「沖田さん,これから世話になりますの」
沖田の視線は見てみぬ振りをし、緋桜が頭を下げると沖田はむず痒そぅな顔をする。
「その沖田さんての止めてくんないかな?慣れないんだよねぇ・・。沖田か総司でいいよ」
渋面の青年を見て思わず顔が緩む。
「では総司殿とでも」
総司はコレに満足したのか元の笑顔となり,緋桜を広間に案内した。
広間には数人の隊士がおり,土方からすでに説明を受けたのか全員驚いた表情は伺えない。
むしろ好奇心と警戒心の混じりいった視線を緋桜に向けている。
「もぅ土方さんから聞いてるよね?こちら緋桜さん。子供捜しに来たんだってさ。」
総司に紹介を促され,緋桜はまた頭を下げる。
「緋桜と申す。山に住んでおった故,都には不慣れでの。こちらの助力を願いたい。しばらく厄介になりまする」
素直に願い出ると隊士の内の一人が話し掛けてくる。
「俺は藤堂平助。好きに呼んで。緋桜さんは幾つ?流派は?・・・目どしたの?」
矢継ぎ早に質問する藤堂を窘めるよう隣の男が口を開く。
「平助、質問は一つづつしないと緋桜さんが困ってしまいますよ?私は山南敬介、話は聞いています。人捜しという事ですがもう少し詳しく話して頂けますか?」
藤堂の不躾な質問をかわすよう山南は言葉を紡ぐ。
さりげない優しさに山南の人間性が顕れている。これには緋桜が驚いた。
此処にはこんな人間も存在するのだと思わず感心しつつ、問いに答える。
「山口という童での。天真爛漫で笑顔の愛くるしい童じゃ!!」
しばし、沈黙が流れた。
天真爛漫で笑顔が愛くるしいなど言わない親を捜すほうが難しい。
山南は笑顔が面の様に張り付いたまま続ける。
「そう…ですか。では幾つ位で性別は?」
「男の子じゃ。最後に会うたのが…10年程前じゃから今は二十歳前後かの?」
緋桜ははっきりと、爽やかな笑顔で言い切った。
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