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「二十歳て!餓鬼じゃねぇじゃんか!!」
藤堂は目を真ん丸にして声を張り上げる。
対して山南は落ち着き払っている
「ま、まぁ…親から見れば幾つになっても子供という事です…か?」
・・・訳ではない様だ。左頬が微かに痙攣していた。
山南の動揺を敢えて無視しながら緋桜は言う。
「今日はもぅ遅い故、明日にでも捜しに出たいのじゃが?」
「あぁ,そんなら明日の巡回は俺様が担当だから連れてってやるよ」
名乗りを上げた青年は原田左之介と名乗った。
約束を取り付けた事で緋桜はようやくホッと胸を撫で下ろす。
折角都まで足を運んで来たのに監禁されて捜しにも行けないのでは困ると思っていた。しかし此処では随分自由に動けることに安心した。
皆から色々な質問責めを受けながら夕餉を終え、部屋へ戻ると丁度土方が緋桜を探しに来ていた。
「おぅ緋桜さん。ちょっと来い」
土方はキョトンとした緋桜を連れ,ある部屋の前で立ち止まる。
「近藤さん、入るぜ」
入室許可を得てから襖を開けると、そこには一人の男がいた。
殺気は無い。男は笑顔でこちらに視線を向けているだけ。
だが不思議な程この部屋の空気は稟と張り詰めた様に鎮まっていた。
「どうぞ掛けて下さい」
低いが、温かみのある声に促され緋桜は入室する。
二人が座り終えるのを待ち、近藤と呼ばれた男が口を開く。
「初めまして,近藤勇といいます。此処で局長を勤める者です」
「緋桜と申す。土方殿のご好意によりこちらで助けて頂くためしばらく厄介になる事になりましての」
近藤はちらりと土方に視線を向けるとすぐに緋桜を見た。
「子をお探しだとか?困っている人を助けるのも我等の勤め。遠慮は無用です」
「ありがたい事ですの。…しかしいつ見付かるかわからぬ故、無駄飯喰らいというのは申し訳ない。私に出来る事はないじゃろうか?」
近藤は笑みを深め、幼子をあやすよう言葉を紡ぐ。
「たった今申し上げたように遠慮は無用です。しかしそれでは納得がいかないとおっしゃるなら・・・そうだな、丁度賄い方が不足していますのでそちらを手伝って頂きたい」
緋桜は近藤の申し出に二つ返事で引き受けた。
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