783人が本棚に入れています
本棚に追加
朝食後,緋桜と原田が外出したのを確認してからすぐに土方は行動した。
先ずは昨日から呼び戻していた監察方の山崎に緋桜の行動を監視させる。
そして自分は近藤の部屋に足を向けた。
近藤は昨日とはうって変わって暗い表情をしていた。
「歳,緋桜君はどうだ?」
土方は胡座をかきながら渋面で答える。
「昨日の今日だ,まだわかんねぇよ。一応今山崎につかせてる」
「・・・そうか,・・そうだよな」
近藤は昨日会った緋桜が,局長を名乗る自分に猜疑心も敵愾心も無いことを感じとっていた。
しかし、それが間者ではないという証拠にならない事も理解している。
ただ,理解と納得は違う。
必要性は理解していても,子を捜しているだけの男に見張りをつけ,同情心を盾に無理矢理屯所に滞在させている事に酷く心が痛んだ。
この近藤勇という男,表舞台に立つ際は全く隙を見せない。しかし幼なじみの土方の前では勝手が違うのか、思考回路がそのまま顔に出る癖がある。
そんな幼なじみの局長に苦笑をもらしつつ励ますのが土方の役目だった。
「勝っちゃんが気にする事じゃねぇよ。まだ黒と決まったわけじゃねぇしな。それにもし白ならあいつにはこれ以上無い親切を受けただけになる」
近藤が話しやすいよぅ、土方は敢えて幼名で近藤を呼ぶ。
「あぁ・・・そうだな」
土方の心配りに苦笑しつつ近藤は意を決した。
「事は結果次第。私も腹を括り事態に臨もう。例え犠牲が出ようとも…」
近藤は真っ直ぐに土方を見据え断言した。
最初のコメントを投稿しよう!