783人が本棚に入れています
本棚に追加
この返事には浪士達も、更にこの現場を傍観していた町人達も目を丸くする。
3対1、しかも浪士相手に盲目の優男が何を言うのか?
目を丸くしていた浪士達の顔が次第に朱に染まり、右手が得物を確認するように伸びる。
「我々を愚弄するからには相応の覚悟があるのであろうな?」
重低音に怒気を孕ませた声音で、いつ刃傷沙汰になってもおかしくない緊迫した空気の中…不意に横手から声が掛けられた。
「はいはいはいそこ!喧嘩ですか?喧嘩なら是非僕も混ぜ・・痛っだぁっ!!」
「違うだろがっ!ったく。…おいあんたら、問題を起こす様なら我等『壬生浪士組』が取り締まることになるが…構わんな?」
相方の頭部に見事な拳を見舞ながら声を掛けてきた二人組。しかし軽い口調とは裏腹に、緩やかな殺気を纏いながら視線を浪士達に向けていた。
対して口上を聞いた浪士達は「げっ」と零しつつあっさり退いてゆく。
ほんの一瞬の出来事に、その人物は所在無さげに佇むばかり。
一応助けられた形となったその人物は、礼を述べるべきかと『壬生浪士組』と名乗った男をぼんやり見えぬ眼で眺めていると、男達がこちらに振り向いた。
「貴殿と今の者達の関係は?」
助けた相手に対し,その男は一切温もりの篭らぬ声音で問い掛けた。
最初のコメントを投稿しよう!