Chapter0『プロローグ』

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「……さむい」 12月。冬の最初の月が訪れ、それに伴いこの日本には寒気が訪れた。 毛布で身を包みストーブの前に座っている俺は、鼻をズズッと鳴らすと最近買った薄型液晶テレビに視線を移す。 『今日の天気は晴れで……』 良かった。雨だったら俺は学校をサボろうと決心していた。 再び鼻をズズッと鳴らし、トースターにある焼いて5分ほどたった冷めた食パンにマーガリンを適当に塗り口に運んだ。 突然時計が8時を知らせる鐘を鳴らし、しぶしぶ毛布をたたんでストーブから離れた。俺はハンガーにかけてある制服とワイシャツを着、違反ではあるが携帯をポケットに入れ、マフラーを巻き、バッグを持ち、家を出た。 ……テレビ消し忘れた。 そう思いながら先生の長い長い説教を聞いていた。 結局遅刻した俺は、公立花咲中学校の生徒指導、安岡に正座させられていた。今にも抜けそうな毛を揃えた薄い頭の安岡は、『俺はお前のためを思ってだなぁ』とまったく言い訳にしか聞こえない発言をしていた。 ようやく安岡から解放されて教室に入った時には一時間目が終わった後の休み時間だった。 「おお宗助」 坊主頭がトレードマークの野球部部員、河井祐太郎が真っ先に声をかけてきた。 「よ。マリモ」 「だれがマリモだ!」 「えっ!?マリモじゃないの!?じゃあ……卵か!」 「このやろう!」 マリモ改め卵は俺に向かって消しゴムを投げる。しかし間一髪避けた俺の後ろに居た平沼彩に消しゴムが直撃した。 「……」 彩の顔がみるみる怒りの表情になっていく。
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