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「ちょっと!マリモ!」
「わぁっ!ご、ごめん!」
彩は卵に向かってバッグを降り下ろそうと構えながら追いかけている。
「その辺にしときなって彩ぁ」
呑気な声で俺は諫める。
「だって宗助!」
俺――山口宗助は席に着き、バッグから教科書を取り出すと机にいれ、携帯をサイレントモードにし、ポケットにしまった。
「そういや宗助」
バッグで頭を叩かれたのか赤くなっている坊主頭の卵が話しかけて来た。
「明日イヴだよな。どうなんだよ?」
「なにが?」
「遊ぶんだろ?」
卵は肩をつんつんつついて言ってくる。
「誰と?」
「俺と」
ひょっとこみたいな口をしながら言う卵。
「そういやお前この前アタックしたってなぁ」
「……成功したと思うか?この卵が」
あら。自覚してたのね。
「期待はしてなかった」
「だから俺はサンタさんにお願いする!『彼女をください』と!」
……そういう考え方だから彼女できねぇんだよ。この卵。
俺の心の声をテレパシーで受け取ったのか、卵はしょんぼりした。しまった。マリモの方が良かったか。
「……まぁ、それで彼女ができるなら苦労はしないけどな」
……なんだそっちか
「何?何の話してんのよ」と、彩が割って入って来た。うわ。この彩の独特のニオイ。甘い香りだけど鼻にツーンと来るこのニオイ。正直俺は好きではない。
「イヴの事」
なるべく短く答えた。鼻に力を入れなければならないからだ。
「あぁ……宗助どうするの?」
「とりあえず……遊びに行くかな。そこのマリモと」
「うへぇ。聖なる夜までマリモと一緒なの」
「『うへぇ』って!なんだ?何を意図してそれを言った!?」
まずい。鼻が限界だ。
「うーん……単刀直入に言うとキモイからかな」
「!……」
体育座りになってしまったマリモをよそに、彩は続ける。
「じゃあ三人で遊ぼうよ!」
「えぇ!?」
マリモと俺が同時に聞いた。
「いいじゃん。ちっちゃい頃はよく遊んでたでしょ」
「俺らは今何歳だ?」
「15」
「な?」
「いいじゃん。15でも。じゃ決まりね。明日駅に集合ねー」
……駄目だこりゃ
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