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修学旅行が終わってから少し経った日のことである。教室がやや騒がしい。
「何かあったのか?」
こういう時に話を聞く相手は決まっている。
「転校生が来るみたいですよ。女の子だそうです」
「本当か?」
「結衣ちんの情報に間違いはありません。それと,さっき潜入した男子の話によると」
「おい!さっさと席につけ!朝礼始めるぞ」
結衣が話している途中で,先生が入ってきた。仕方ない。席に戻るか。
「本日,新しく転入生が入ってくるぞ」
わあっと歓声が上がる。主に男子陣から。
「よし,じゃあ入れ」
先生が教室のドアを開け,転入生が入ってきた。
「野崎光香といいます。よろしくお願いします」
大人しい感じの子だ。ただ野崎光香とは。どこかで聞いた気がする名前だな。見たこともある気がする。
「野崎さんってよく雑誌とかで出てるモデルの野崎さんですか?」
結衣が勝手に発言する。
「ええ,そうですね」
野崎さんが笑って答える。なるほど。どこかで見たことあると思ったらモデルだったのか。
「あ」
僕と目があった野崎さんが,声を上げた。
そして,こっちに向かって歩いてくると,僕の机の前に立って言った。
「君,鳴海くん?」
「え?まあそうだけど」
「うわ~,変わってないね。ほら,覚えてる?小学校で一緒だった」
小学校,野崎光香…。ああ,思い出したぞ。
「小6の時に転校してった」
「嬉しい~,覚えててくれたの。まさか同じ学校の同じクラスだったなんて。色々教えてね」
手を出してくる。
「ああ」
僕もその手を握り返す。
そしてその時,クラスの全員の視線が僕に注がれているのに気が付いた。
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