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一時はうろたえた井原さんだったが,すぐに僕とのことを話し出した。
「まあまとめてみれば,私は鳴海くんが好きなんですが鳴海くんは違うという訳です」
「なるほど。ありがとう」
野崎は満足したように頷いた。
「役に立ちましたか?」
「すっごくね」
そう言って,井原さんにウィンクした。
「…鳴海」
突然名前を呼ばれて振り返ると,霧生が立っていった。
「なんだ霧生か。驚かすなよ」
「…会長が探してる」
僕の言葉は無視してそう言うと,さっさと行ってしまった。
「会長って?」
後ろから野崎が聞いてくる。井原さんはもう友人のところへ戻っていた。
「生徒会長だよ」
「へえ。絶大な信頼を得ているのよね。皆から聞いたわ」
そして歩き出す。
「どこ行くんだ?」
「その会長さんに会いに。どんな人か気になるし」
一緒に会う気なのか。
「会長,探してたんですって?」
教室の前に奈央子を見つけ,呼ぶ。
「ああ,やっと来たか。実は野崎さんを一目見たくてな」
「野崎なら隣にいますよ」
「初めまして,野崎光香です」
奈央子にお辞儀をする。
「こちらこそ」
奈央子も野崎にお辞儀し返す。
「実物の方が可愛いんだな」
「いえいえ」
「会長も野崎のファンなんですか?」
「いや,ファンではない。見たことがあるだけだ。じゃあ用件はこれだけだから」
そう言うと奈央子は帰っていった。
「可愛らしい会長さんね。本人に自覚は無いみたいだけど」
立ち去る奈央子を見て野崎が言った。
「学校の人気者だからな」
僕がそう言うと,休み時間の終了のチャイムが鳴った。
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