プロローグ

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試合終了後,すぐ帰っても混雑している。だから奈央子と僕は,球場前のベンチに腰掛け,しばらく待つことにした。 「今日はいい試合だったね」 「本当。さすが岩田って感じだわ」 「相木の走塁も凄かったし」 「最後は1・2番の凄さを象徴するような攻撃だったな」 「本当に」 奈央子の笑っている横顔を見る。すごく可愛かった。 「あ,そうだ和也」 奈央子が急にこっちを見た。反射的に目を反らしてしまう。 「あれ?今私のこと見てた?」 オホンと咳払いをする。 「あんまり見ないでよ。恥ずかしいじゃん」 なんて可愛い反応なんだ。生徒会長ファンが見たら失神するぞ。 「なんか話があるんじゃないのか?」 話題を反らす。 「うん,そうそう。学校ではさ,いつも通りにしてね。私もいつも通りにするから。 和也と付き合ってることは秘密」 「分かった」 「本当に?」 ずいっと顔を近付けてくる。 「うん」 「タメ口で呼んだら,怒るからね」 そう言って顔を離す。ほっと一息。奈央子みたいな可愛い子に詰め寄られたら,僕でなくとも緊張してしまうだろう。 「さ,そろそろ帰れそうだね」 人通りも若干少なくなっていた。 「うん,そうみたいだな」 奈央子は立ち上がると,僕の手をまた握る。 「学校じゃ,手なんか握れないもん」 恥ずかし気に言う奈央子。本当に可愛いな。生徒会長の時は威厳に満ちいて,可愛いとかは全く思わなかったけど,こうして1人の女子として見ると,すごく可愛い。こんな人があんな風になれるのかと,感心を覚える。 「そうですね,会長」 わざとこう言ってみる。 「今は会長はだめ~っ」 はっはっは。本当に可愛い。 こんな奈央子ともっと仲良くなりたい。そう思った。
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