1184人が本棚に入れています
本棚に追加
「へい!お待ち!」
店員がラーメンを持ってきた。そして,俺のところに来て,小声で言った。
「こんな可愛い子,滅多にいないから大事にしなよ」
余計なお世話だ。でも客観的に見ても,今の奈央子は可愛いらしい。
ラーメン屋を出た時,時間はまだ12時前だった。
「少し早すぎたかな」
時計を見て奈央子が言う。開門まであと1時間もある。
「どうする?」
「どうしよっか?」
奈央子にも意見は無いようだ。しかし珍しいな,奈央子が時間配分を間違えるとは。
「じゃあ,グッズショップにでも行くか?」
「あ,いいね」
奈央子が僕の手をまた握る。そして歩き出した。
「あ,そうだ,奈央子?」
「何?」
「これまで男子とこういう風にデートしたことあるか?」
「ある訳無いじゃん。和也が初めて」
「じゃあ僕が初彼?」
「そうだよ。和也は?」
「奈央子が無いのに,僕がある訳無い」
奈央子は普通にモテていたりする。だが,そんな奈央子が好きな人でさえ,奈央子のこっちの性格を知らないはずだ。
「じゃあお互い初めてなんだね」
奈央子がにっこり笑った。こんなによく笑う奈央子も初めて見る。
「でも,奈央子は何回か告白されたことがあるでしょ?」
「ははは,確かにね」
「全部振ったのか?」
「そりゃあそうだよ。私を好きになった子は皆,生徒会長としての私を好きにだから。偽りの私を愛してくれてもね…」
「でも僕はいいの?」
「和也は私が好きなんだもん」
この奈央子から好きと言われると,また違う感じだ。少し赤くなった顔が,また可愛い。
そんなことを考えていると,もうグッズショップが見えてきた。
最初のコメントを投稿しよう!