プロローグ

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「へい!お待ち!」 店員がラーメンを持ってきた。そして,俺のところに来て,小声で言った。 「こんな可愛い子,滅多にいないから大事にしなよ」 余計なお世話だ。でも客観的に見ても,今の奈央子は可愛いらしい。 ラーメン屋を出た時,時間はまだ12時前だった。 「少し早すぎたかな」 時計を見て奈央子が言う。開門まであと1時間もある。 「どうする?」 「どうしよっか?」 奈央子にも意見は無いようだ。しかし珍しいな,奈央子が時間配分を間違えるとは。 「じゃあ,グッズショップにでも行くか?」 「あ,いいね」 奈央子が僕の手をまた握る。そして歩き出した。 「あ,そうだ,奈央子?」 「何?」 「これまで男子とこういう風にデートしたことあるか?」 「ある訳無いじゃん。和也が初めて」 「じゃあ僕が初彼?」 「そうだよ。和也は?」 「奈央子が無いのに,僕がある訳無い」 奈央子は普通にモテていたりする。だが,そんな奈央子が好きな人でさえ,奈央子のこっちの性格を知らないはずだ。 「じゃあお互い初めてなんだね」 奈央子がにっこり笑った。こんなによく笑う奈央子も初めて見る。 「でも,奈央子は何回か告白されたことがあるでしょ?」 「ははは,確かにね」 「全部振ったのか?」 「そりゃあそうだよ。私を好きになった子は皆,生徒会長としての私を好きにだから。偽りの私を愛してくれてもね…」 「でも僕はいいの?」 「和也は私が好きなんだもん」 この奈央子から好きと言われると,また違う感じだ。少し赤くなった顔が,また可愛い。 そんなことを考えていると,もうグッズショップが見えてきた。
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