修学旅行という名の想い出作り

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京都駅でバスに乗り換える。ここから奈良まで一気に行くのだ。 バスではクラスではなく,班ごとで乗ることになっている。僕と充も,奈央子達生徒会メンバーと合流した。 「ここから奈良まで結構あるよね」 川口さんが一言言う。 「確かにな。バスで一眠りするかな」 新幹線では結衣がうるさかったせいで,いつもより疲れた。 「そうはいきませんよ~。かずやんとはまだまだ話すことがあります」 「結衣,お前も同じバスなのか?」 結衣の突然の乱入に,呆然とした他の人達をほかって,僕は結衣に言った。 「はい。しかも通路を挟んでかずやんの隣の席です」 マジでか!死亡フラグだろ,これは。 「結衣,あんまり他の班に迷惑かけるなよ」 結衣の後ろから,別の女子の声がした。 「これはあーやーじゃないですか!」 長い黒髪を後ろで1つに結んでいる,気の強そうなその女子は,谷中綾。僕と同じクラスだ。 「あーやーって言うな」 そう言って,ぽかりと結衣を叩く。 「ごめんね,鳴海くん。結衣が迷惑かけていたみたいで」 「いや,別に大丈夫だ」 「そう,ならいいんだけど。何かあったら私に言ってね」 「ああ,分かった」 谷中さんとは初めて話したが,見た目とは裏腹に結構普通な感じだな。もっと男っぽい奴だと思っていた。 「行くよ,結衣」 「は~い」 結衣を連れて,谷中さんはバスに乗り込んで行った。 「おい,鳴海。私達もさっさと乗るぞ」 「はい,すいません」 奈央子に呼ばれ,我に帰った僕は,バスに乗り込んだ。座席に座るとき,井原さんが妙に対抗するような目で結衣を見ていたのは,気にしないことにした。
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