修学旅行という名の想い出作り

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「ところで,結衣は川口さんを知ってるのか?」 ふと疑問に思ったことを聞いてみた。 「絵美たんとは去年同じクラスでしたから。仲はいいです」 「結衣ちゃんといると凄く楽しいんだよ」 後ろの席からも,川口さんの返答があった。確かに結衣と一緒なら,毎日の生活は楽しくなるだろうな。かなり疲れそうだが。 まあ川口さんと結衣ならいいコンビだろう。両方似た者同士だ。 「そうか」 「でもなんでそんなこと聞くの?」 「いや,新幹線で結衣が川口さんを相性で呼んでいたからな。川口さんをどこで知ったのだろうって気になって」 「そういうことでしたか」 結衣はそう言うと,にっこりと笑った。 「ねえ,鳴海くんは東大寺でどう過ごすの?」 結衣の隣の芳江が言った。 「別にぶらぶらしようかと。大仏なんて小学校の時に見たからな」 「へえ,そうなの。私達は大仏見に行くんだけど」 「いいんじゃないの?自由にすれば。最終的には僕も鹿と遊ぶことになるかも」 「そうね,それは皆一緒よ」 確かにそうだろう。東大寺と言えば鹿と大仏である。態々行くのだから多少は鹿ともふれあいたい。 東大寺に着いたのは,もう正午も過ぎた頃だった。
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