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グッズショップには,フライチャンズチームのグッズが所狭しと並んでいる。
「奈央子は野球が好きなの?」
「うん。大好き。和也は?」
「僕も好きだよ。特に岩田とかさ」
好きな選手の名前を言う。岩田は俊足好守の遊撃手で,打撃も上手い。
「へえ~,そんなんだ。私は相木が好きなんだけど」
奈央子は俺の好きな岩田と二遊間を組む相木が好きなのか。
「そうなんだ」
1・2番コンビで二遊間コンビを好きとは。僕と奈央子は気が合うかもしれない。
「結構色んな物があるんだね~」
「確かに」
選手の写真が貼ってあるシャープペンや,下敷き,リストバンドにユニフォームもある。
「ねえ,これ買おうよ」
そう言って奈央子は,球団のロゴが書かれたシャープペンを取った。
「お揃いでいいでしょ?」
「そうだな。折角一緒に来たんだから」
これも思い出になるかもしれない。
「じゃあこれは,私がおごってあげる」
奈央子が笑って言った。
「いいよ,そこまでしなくても」
「わざわざ私に付き合ってくれたんだもん。そのお礼。気にしないで」
お礼なんて。僕は奈央子の違う一面を見れたから,それだけでいいのに。何たってチケットでさえ,奈央子の奢りだ。さすがに金欠になるんじゃないか。
「お金は大丈夫か?」
「問題ないよん」
可愛らしく言う。この様子じゃあ大丈夫そうだ。
奈央子はレジへ向かう。僕は後ろから着いていき,会計の様子を見るだけだった。
レジの係員が,奈央子と僕を見て一瞬眉をつり上げたのは,僕が奈央子に奢らせているように見えたからなのか,それとも不釣り合いカップルだと思ったからか。あるいは両方かもしれない。
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