修学旅行という名の想い出作り

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青々とした木々の下を,僕と奈央子が歩く。ここまで来ると,さすがに鹿も少なくなってくる。 「ここまで来ると,本当に2人きりだね」 確かに周りには鹿どころか,人も全然いない。 「そうだな」 「じゃあこんなことをしてもいいよね」 そう言うと,奈央子は僕の腕に飛び付いてきた。 「おい,またさっきみたいに結衣とかが潜んでるかもしれないぞ」 特に結衣は僕と奈央子の関係を怪しんでいる。 「大丈夫。さっきは人混みに紛れて見えなかったけど,今は障害物とかは無いから」 確かに視界は広いがな。 「高校2年の修学旅行は今しかないんだよ?だから私は私のしたいことをするの」 「そうか」 「和也は嫌かな。こんな風にくっつかれるのは」 「いや,全然大丈夫だ。むしろして欲しいと言うか…」 その言葉に,奈央子はフフッと笑う。 「結構和也ってこういうの好きだよね。この前メイド服着たときも,なんだかんだで嬉しそうだったし」 「言っておくが,こういうのは思春期の正常な反応だぞ。奈央子みたいな可愛い子がメイド服を着たり,腕に抱きついてきたりしたら誰だって嬉しいって」 それを言った途端,奈央子の顔がかあっと赤くなっていく。 「そんな…,可愛いだなんて…」 そして小さな声で言った。 ヤバイぞ。 可愛すぎる。 思いっきり抱きしめたい。 「奈央子,周りに人,いないよな」 「え?…うん。全くいないよ」 その言葉を合図に僕は奈央子を思いっきり抱きしめた。 やってることが充と変わらないなと,自分自身を哀れみながら。
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