修学旅行という名の想い出作り

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ようやく人や鹿の多いところに出ると,そこにはまだ充と川口さんがいた。 「まだいたのか」 「もうお土産も買ったからね。時間までこうやって2人で鹿を眺めてるよ」 「結衣はどうしたんだ?」 「結衣なら少し前に谷中さんのグループと井原さんと宮川が来て,一緒に行ったよ」 「そうか。まあ僕はお土産を買ってくるから。じゃ」 「じゃあな~」 土産物店へ向かう。奈央子も川口さんと話していたが,僕の方へ来た。 「せっかくだから土産も買わなければな」 さっきからずっと会長口調である。照れ隠しらしい。 「川口さんは何か言ってたか?」 近くに生徒もいないので,普通に聞く。 「特に何も。ただ,幸せとはこういうことだね,とは言っていた」 「そう」 川口さんにとって,恋人と鹿をのんびり眺めるのが幸せらしい。ほのぼのする光景だな。 「あ,会長さ~ん」 土産物店にいた,女子グループ(僕の知らない人達だ)が奈央子に声をかける。 「ちょっと来て下さ~い」 「何だ?」 呼ばれて向かう奈央子。楽しそうに話しかけられている。奈央子は女子生徒の憧れみたいなものだ。男子からも女子からも人気は高いと思う。 「おい,鳴海」 突然肩をポンと叩かれる。 「なんだ,高木?」 同じクラスの高木だ。他にも霧生,野口,篠島がいる。野球部グループだな。 「お前,会長と仲いいよなあ。できてんの?」 「は,まさか!単純に生徒会が一緒なだけだ」 「じゃあなんで毎日一緒に帰ったり,班を一緒にしたりするんだよ」 ああ,野球部は遅くまで練習してるからな。グラウンドから見られてるのか。 「別に。大した理由はない」 「そうかい。まあ会長に手え出すなら注意しろよ。会長好きな奴は山ほどいるからな」 やはり人気なのか。 「ただでさえ井原さんの件で,敵作ってるんだもんな」 「注意するよ」 適当に返事する。まだ一応敵はいないはずだ。 「まあお土産買うなら一緒に買おうぜ」 篠島が誘ってきた。 「そうするよ」 たくさんでいた方が楽しい。
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