修学旅行という名の想い出作り

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部屋に帰ると,なぜか谷中さんが混じっていた。 「どうしたんだ?」 僕が言うと谷中さんが振り返る。 「あ,鳴海くん。結衣見なかった?」 「いや,見てないな」 「そう」 少しだけ落ち込んだ感じの谷中さん。 「結衣がいなくなったんだってよ」 高木が言う。 「きっとどこかを散策してるんだろうね」 と野口。 「結衣は好奇心旺盛だからな」 と篠島。 「だから心配することないって」 と充。 「うん,私もそう思うんだけど。一応もう少し探してみる」 「…俺も手伝おうか?」 霧生がボソッと言った。 「え?いいの?それじゃあ手伝ってもらおうかな」 「…分かった」 「ということでしばらく霧生君をお借りします」 谷中さんは笑いながら出ていった。霧生も後ろからついていく。 それをしばらく呆然と見ていたが,野口が言った。 「霧生って,あういうタイプだったかね」 「ああ,いつもなら黙りきってたはずだよな」 「そんなことはいいんだよ。鳴海,会長はどうだった?」 「きっと来る。一応8時って言っておいたが」 腕時計を見る篠島。 「もうすぐじゃねえか!」 「よし,皆!押し入れに隠れるぞ」 高木が言う。 「鳴海~,入るぞ~」 外から会長の声がする。 「ヤバい,来たぞ!さっさと入れ!」 高木が静かに叫ぶ。そして押し入れを開けると,さっと入った。 「早くしろ!」 急かしている高木に従って,次々入っていく。仕方なく僕も入った。 ガチャ ドアを開ける音がする。間一髪セーフだったか。ただ,さすがに狭いな。上の段と下の段に別れたんだが。 「痛た…。もっとゆっくり入ってくださいよ」 横からパッと光が照らされた。見ると懐中電灯を持った結衣がいた。 「結衣,なんでいるんだ?」 びっくりしたが,あまり声が出せなかった。 「それは勿論,面白そうだったからですよ」 にっこり笑って結衣が言った。
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