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少しだけ押し入れの扉が開いた。上にいる高木か充が開けたのだろう。野口は結衣と一緒に僕の隣だ。
じっと見てると,奈央子が入ってきた。
「おや,鳴海はいないのか。奴に呼ばれたんだが…」
部屋に篠島しかいないのを確認して言った。
「いえ,会長さん。俺から話があるんです。鳴海には俺が頼んで呼んでもらいました」
自然と奈央子の前では敬語になってしまう。女子は知らないが,男子はほとんどこの現象が起こっている。実際,僕も奈央子と付き合い始めるまでは,敬語で接していた。
「そうか。君は誰だ?」
「篠島安昭って言います」
篠島は少し緊張した様子だ。
「篠島くんか。それで?話とは何のことだ?」
オホンと1回咳払いをする。そして言った。
「俺と付き合ってくれませんか?」
部屋全体に沈黙が走る。
「…すまない,それは無理だ」
奈央子がしばらくたってから言った。
「そうですか…,そうですよね」
明るく返すが,篠島は今にも泣き出しそうな顔だった。
「学年のベスト5に入るイケメン,アッキーの振られる瞬間ですね♪」
楽しそうだな,結衣。
「ああ,だが気持ちは嬉しかったぞ。では失礼する」
それだけ言うと奈央子は去っていった。
途端に扉が開いて上から高木と充が落ちてきた。
「まさか篠島が振られるとはな。一体なんでなんだ?」
「他に好きな人でもいるのでは?」
「まさか野口。それは無いだろ」
いやいや高木,野口の意見が実は正解だ。だが僕には公表する気はないがな。
「では私はお風呂の時間なので部屋に帰ります」
「うわっ,結衣!お前谷中が探してたぞ」
「あーやーがですか?後でメールでもしておきますか」
「まさか結衣,見てたのか」
篠島が驚いたように言った。
「はい,バッチリと♪」
笑って言うと,結衣は出ていった。それと同時に崩れ落ちる篠島。
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