プロローグ

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シャープペンを買った後も,僕達はグッズショップを見て回った。といっても,何も買うものは無かった。 しばらくすると1時になり,僕達はやっと球場に入ることができた。 「長かったね~」 「待ち合わせが早すぎたんだって」 「あはは。それはごめんね」 どう見ても謝っている人の顔じゃない。反省はしてないのか。まあいいけど。 「飲み物とか持ってかなくちゃね」 「あそこの売店で買おうか」 「そうだね。それがいいよ」 まだ開門したばかりということもあり,並ばずに飲み物を買うことができた。 飲み物を買い終えると,いよいよ席へ向かう。 「ええっと席は…」 自分のチケットを見ながら奈央子が言う。 「あ,あそこだね」 そう言うやいなや,僕の手を引っ張って歩き出した。 「うそ。最前列じゃん」 「そうだよ」 今日チケットを貰ったので,座席は確認していなかった。まさか内野席の最前列とは。 「高かったでしょ」 「さあ。お父さんが貰ってきたものだから」 そう言いながら,席に座る。僕もその隣に座った。 現在は相手チームの練習時間だ。フリー打撃やキャッチボールなどをしている。 「うわぁ。すっごい飛んでるね」 今打撃練習をしているのは,相手チームの4番打者だった。 「そりゃあ,だてに30本ホームランを打ってる訳じゃないさ」 それからしばらく,相手チームの練習を僕も奈央子も見入っていた。
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