千年の都

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修学旅行2日目の朝。 ホテルを出発する時間がやってきた。僕も他のルームメートと一緒に荷物をまとめてロビーへ行く。 「絵美~,会いたかったよ~!」 「充くん,私も~♪」 充が先に着いていた川口さんに思いっきり抱きついた。 奈央子の想像していた通り,とんだバカップルになりそうだな。高木達も呆然と突っ立っている。これならワザワザ隠す必要も無いわけだ。 「…早く行こう」 霧生が言った。相変わらずドライだな。 「あ,いたいた霧生くん」 霧生の後ろから,谷中さんがやって来た。 「……谷中さん」 「昨日はありがと」 「……こちらこそ」 谷中さんの前だと間が長くなるんだな。 「霧生くんって変わってるよね。無口って言うか」 「……そう」 ふふふっと谷中さんが笑った。 「……何か面白かった?」 「あ,ごめん。気に触った?」 「……大丈夫」 本当に必要以上は話さないんだな。 「じゃね。また後で」 「……うん」 バスへ向かう谷中さんを霧生はじっと見ていた。 気づくと既に充は川口さんと楽しそうに話しながら,バスへ向かっていた。野球部グループも霧生と一緒に出ていく。 「何ボケッと立ってるんだ?」 後ろからどんと叩かれた。この声は… 「会長?」 「ああ。おはよう,鳴海」 「おはようございます」 「今日は忙しくなるぞ」 「覚悟してますよ」 「そうか」 奈央子はにこりと笑った。 「早くバスへ行こう」 「ええ」 僕は奈央子と歩き出した。
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