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「しかし川口と清川はいいな」
バスへ向かう途中,奈央子が突然言った。
「なんでですか?」
「皆の前でも平然と抱き合えるなんて。私なんか手を繋ぐことさえできないのに」
「あの2人も僕らも特別なんですよ。僕は会長と一緒にいれるだけで十分です」
さすがに平然と抱き合えるのは異常だ。
「…」
奈央子からの返答がない。奈央子の方を見ると顔が赤くなっていた。
「大丈夫ですか?」
「鳴海のせいだ」
そう言うと奈央子は早足で行ってしまった。照れてるのか。
バスに乗り込むと,充の席に奈央子が座っていた。
「どうしたんですか?」
「清川が川口の隣がいいと言ったので替わっただけだ」
「そうですか」
「別に私が鳴海の隣がいいとかそういう訳では無いからな!仕方なく替わったんだ」
「何も言ってませんよ」
あえて否定するところも怪しいな。仕方なくじゃなく,喜んで替わったんじゃないのか?
そんな風に思いながら座る。すると突然,奈央子が手を握ってきた。
「!」
「ここならバレないからいいだろう」
かなり小さな声で言った。やっぱり喜んで替わったんじゃないのか?
かくして,バスが京都へ行くまでずっと奈央子は僕の手を握ったままだった。篠島が見ていたら殴りかかっていたかもしれない。
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