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あ~,不安は的中したようだ。こりゃ完全に迷子だな。
「よし,じゃあ次こっち!」
川口さんが先頭を歩き続ける。
「なあ,これってマズい状況じゃね?」
宮川が話しかけてくる。
「ああ。マズいな,かなり。これだけ歩いて1回も寺に着いてないんだからな」
「止めた方がいいんじゃ?」
「いいだろうな。でも会長が何も言わない」
奈央子は黙って…というか井原さんと話しながら歩いている。
「もしかして会長達も迷子だって薄々気付いてるんじゃ?」
「かもしれないな。行ってみるか」
「ああ」
僕と宮川が会長の方に近づく。
「会長~」
こっちを向く奈央子。
「僕ら,迷子になってません?」
「ああ,今私達もその話をしていたところだ」
宮川の予想が当たったか。
「川口さんを止めます?」
「ああ,そうだな。
おい,川口!」
奈央子が叫んだ。川口さんがびくっとして振り返る。
「なっ何?」
「迷子になっている気がするんだが」
奈央子の一言に川口さんはむっとしたように言った。
「そんなことないよ。私の通り歩けば絶対に大丈夫だから!」
そう言うとくるっと振り返ってまた歩き出した。
「意外と頑固ですね」
「ああ,そうだな。とりあえず位置確認してみるか」
携帯を取り出す奈央子。これではっきりする。
「次はこっち!」
川口さんはまた通りを曲がった。
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