千年の都

5/11
前へ
/172ページ
次へ
あ~,不安は的中したようだ。こりゃ完全に迷子だな。 「よし,じゃあ次こっち!」 川口さんが先頭を歩き続ける。 「なあ,これってマズい状況じゃね?」 宮川が話しかけてくる。 「ああ。マズいな,かなり。これだけ歩いて1回も寺に着いてないんだからな」 「止めた方がいいんじゃ?」 「いいだろうな。でも会長が何も言わない」 奈央子は黙って…というか井原さんと話しながら歩いている。 「もしかして会長達も迷子だって薄々気付いてるんじゃ?」 「かもしれないな。行ってみるか」 「ああ」 僕と宮川が会長の方に近づく。 「会長~」 こっちを向く奈央子。 「僕ら,迷子になってません?」 「ああ,今私達もその話をしていたところだ」 宮川の予想が当たったか。 「川口さんを止めます?」 「ああ,そうだな。 おい,川口!」 奈央子が叫んだ。川口さんがびくっとして振り返る。 「なっ何?」 「迷子になっている気がするんだが」 奈央子の一言に川口さんはむっとしたように言った。 「そんなことないよ。私の通り歩けば絶対に大丈夫だから!」 そう言うとくるっと振り返ってまた歩き出した。 「意外と頑固ですね」 「ああ,そうだな。とりあえず位置確認してみるか」 携帯を取り出す奈央子。これではっきりする。 「次はこっち!」 川口さんはまた通りを曲がった。
/172ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1184人が本棚に入れています
本棚に追加