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紅蓮はゆっくりと立ち上がって前に歩み出る。
少年の怯えた眼が紅蓮を捕えた。
少年を、怖がらせないようにしゃがんで目線を合わせる。
「お前、名前はあるか?」
紅蓮が尋ねる。
「な、まえ……ですか?」
「そうだ。名前はあるのか?」
ゆっくりと問い掛ける。
少年は一旦、眼を伏せたが紅蓮を見つめ、また口を開いた。
「何で…名前、聞くんですか?」
「フッ。初対面だから聞いたまでだが?」
弱々しいその問いに紅蓮は優しそうな笑みで答える。
「………零汰、です」
少年は消え入りそうな声で答えた。
「零汰と言うのか?」
「……はい…」
「お前は俺が買った。零汰、俺と一緒に来い。」
「はい。分かりました」
これが2人の出逢いだった。
この出逢いは2人にどのような運命を下すのだろうか。
それはこの2人も知らない事。
今、此処デ運命ノ歯車ガ廻リ始メル…………。
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