プロローグ†必然の出逢い†

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ザワザワと人が行き交う屋敷内。 何十人と言う商人達。 どうやらこの屋敷が競り会場らしい。 その証拠に床には木で作った檻。 中には少年達が一人づつ入っている。 しかし少年達には少し、違う所がある。 それは、獣耳で尻尾が生えていると言う事。 この少年達は競りにかけられるために、此処に居る。 向こうから一人の男が歩いてくる。 歳は20代と言った所だろうか。 漆黒の髪に紅い眼。 そして黒いスーツに身を包んでいる。 どうやらこの男は、競りの常連らしい。 「紅蓮さん、久しぶりだね。最近、見なかったな」 一人の商人がその男に話しかけた。 顔見知りのようだ。 「ああ、やっと仕事が片付いたんだ。だから久しぶりに顔でも出そうかと思ってね」 紅蓮と呼ばれた男は淡々と答える。 「そうかそうか。あんまり無理しちゃいけないぜ。紅蓮さんが居なくなったら寂しいからな」 「金ヅルが居なくなるからか?」 「ははっ、まさか。紅蓮さんは大事な常連さんだからだ」 「じゃあ、そう言う事にしておくよ」 「そう言う事にしておいて下さい」 「そう言えば、何か目玉商品はあるか?」 紅蓮が急に話を変える。 「今回は……。この仔だがどうだ?」 そう言って商人が勧めた檻の中には、碧の髪に蒼い眼をした少年。 自分がどうなるのか分からず怖いのか微かに震えている。 「この仔か?」 「ああ、そうだ。綺麗な眼と髪をしていると思うがどうだ?」 「確かに綺麗だが……」 「あぁ、何でだろうな…」 「仕方がありませんね。これは競りに出しましょう」 「悪いな。何故かピンと来ないんだ」 バツが悪そうに紅蓮は謝る。 「良いですよ。ひょっとしたら良い仔が居るかもしれませんしね」 「それもそうだな」 「そう言えば、そろそろ競りが始まりますよ」 「もうそんな時間か。じゃあそろそろ失礼するよ」 「それではまた」 二人は一言交わして別れた。
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