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鏡に写るわたし。肩の辺りで、けれども綺麗とは言い難い実にバラバラに鋏を入れられたわたしの髪。まるで、子供が好奇心に任せて人形の髪を切ったような……そんなみっともない姿だった。
そんな散々な出来でも、あなたはやはり笑っていて。時折頬に滲んだ血を舐めとるその姿は、ひどく恐ろしく、しかし魅惑的なものだった。
やがて鋏が止まって、ようやく終わったのだろうかと、わたしは少しだけ力を抜いた。
……そういえば、あの頃は、わたしがあなたの髪を切ってあげていたっけ。
意味の無い過去への逃避。知的な外見とは裏腹に、情熱的なまでに激しい感情の起伏だとか、優しげながら自らの欲求に素直なところだとか。あの頃のわたしは、あなたの全てに惹かれていた。
ほんの少し前の事の筈なのに、今では遠い過去のよう。
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