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そんな過去との邂逅も、長くは続かない。あなたが、それを許さないからだ。
いつのまにか止まっていた鼻歌。歪な微笑み。
それに気付けなかった自分に嫌気がさした。
そして、振り翳される鋏。
それは間違いなくわたしの元へと降りてくる……!
瞳を閉じる事もできず、吐き気を催す程の恐怖が全身につたわる。気づいたときには、刃先はわたしの目前へと突きつけられていた。
「何を、考えていたの?」
抑揚の無い声音が耳に痛い。きっと、射抜くような視線がわたしを捉えているのだろう。
「不要な思考に耽るのは、悪い癖よ?」
やがて、わたしの目前を離れ、無造作に鋏が投げ捨てられる。同時に、宥めるように額へと落とされる唇。
小さく、息をのむ。それが今のわたしにできる精一杯だった。
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