ベターハーフ(ベターハーフシリーズ)

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真っ暗な夜道に、ゆらゆらと自転車が揺れる。 言いたいことはこんなんじゃない。 だけれど、どうにも照れ臭くて、いたたまれねぇし。 つい、小言しか出てこねぇ。 付き合ってても、どこにも連れていってやれる訳じゃない。 妹尾がウチに来てくれるから、少しだけこうした時間が取れるだけだ。 申し訳なく思う。 多少焦りも感じる。 …何てったって、コイツはモテるから。 「なぁ、…ウチに来て、楽しいか」 ぼそり、と呟いた言葉にふふ、とほくそ笑む声が返る。 「たぁのしいわよぅ! お祖母さまとお話しするのも面白いし、料理して一緒に縫いものして…。 秘蔵のアルバム見せて貰って、お遊戯するちっちゃい天志郎が…」 「ッ、ばあちゃん…ッ!!」 怒りの余り、相当な蛇行運転をかます。 左右に振られた妹尾がキャーッと叫んだあと、大声で笑った。 「でも、1番は、こうして送っていってくれる時間かしら。 天志郎を独り占めだもの」 ギュッと身体を押し付けてくる背中の温もりに、ざわついていた心が鎮まっていく。 好きな女が家族を好いていてくれて、疲れて帰ると待っていてくれる。 もしかしたら、俺はとても幸運なのかもしれない。 「…妹尾」 「なに?」 「今度、どこか行くか」 『ベターハーフ』 「とりあえず、ホテルは却下よ?」 「独り占め、だぞ?」 「却下、却下、却下~!!」
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