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バシッ…
僕は震える手で思い切り藤田くんの頬を叩く。
「出ていけ!」
「立花…オレは」
「お前なんか絶対許さない。出ていけっ!」
藤田くんは諦めたようにため息を吐き、立ち上がる。
「悪かった…こんなつもりじゃなかった」
ドアが閉まり、やっと藤田くんは消えてくれた。
痛い…身体が
痛い…心が
外は雨が降り始めていた。
暗い部屋の中、
僕はただ泣くことしかできなかった。
◇★◇
旅行バックを棚に載せて、僕は新幹線の指定席に座る。
藤田雅人に犯された翌々日だ。
昨日雨はあがったけれど、僕の胸の中に降る雨はまだ止まない。
この先もずっと止まないだろう…。
サヨナラ
短くても幸福だった尾崎さんとの日々ーー。
僕が望んだ永遠は、儚く泡のように消えてしまった。
もう夢も見ない。
そう、どうせ消え去るものならば永遠なんて信じない…
動き出した車両は、僕を未知の土地へと運ぶ。
降り続く雨と共にーー
END
『幸せのかけら』
Thank you for reading to the last
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