第一楽章:雑貨狂想曲

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 店の奥へ背を向け、出口のドアに向かって骨董品を掻き分けて前進する。  もう少しでドアノブに手が届くというところで私の袖が引かれた。 「さっきは本当にごめんなさい」  立ち止まって振り返ると、深々と頭を下げるフルーの姿があった。 「アタシ、ここで働き出して間が無くて、初めてのお客さんでちょっと嬉しくて。決して悪気があってアナタをこんな目に遭わせたわけではなくて……その」  早口で一生懸命に話すフルーの様子に私は自然に優しい笑顔を作っていた。  あーあ、可愛い子ってこういう時有利だよなぁ。こういう顔されて許さなかったら、私が悪人みたいじゃないの。  屈んでフルーに目線の高さを合わせる。 「大丈夫、怒ってないわ。確かにいろいろ驚かされた事はあったけど」 「ホントに?」 「ホントのところはちょっと不機嫌」  ちょっとした悪戯心でそう答えると、フルーの顔の悲愴感が一気に増す。彼女のあまりに素直な反応に、私は思わず吹き出していた。 「大丈夫だって。今はもうホントに怒っていないから。ね。」  どれぐらいぶりだろう。こんな優しい話し方ができるとは、自分のことながらすっかり忘れていた。 「許してくれてありがとう。えーっと……」 「トラムよ。トラム・ウェット」 「ありがとう、トラム。ねぇ、ホントに五線紙だけでよかったの? トラムはアタシの一番最初のお客さんだもの、何か他にも欲しい物があったら言ってよ!」  自分が許された事が本当に嬉しいらしく、笑顔で話してくる。 「そうねぇ」  彼女の逆らい難い笑顔に負けて、大して興味の無い骨董品の山を眺めてみる。
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