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震える私を先輩が抱き締めた。もういいと言われたけど、私の口は動き続ける。
「…私が、生まれて、来なければっ、お母さんは、浮気なんてしなかった…っ?私っが、死ねば、お父さんはっ、幸せになれる…っ?」
自分の心の中に留めていた、まだ誰にも言った事のない私の本音。
「もう何も言わなくていい」
何も言うな、と、先輩が痛い位の力で抱き締める。
「…うぅっ、……ひっく」
「凛が生まれて来なかったら、俺は凛に会うことが出来なかった。凛が死んだら、俺は一生誰かを好きになる気持ちなんて知らなかった。…凛がいるから、俺は幸せになれた。だから、俺は凛が必要なんだ───…」
“凛が必要なんだ”──…。
私は誰かにそう言って欲しかったのかも知れない。先輩の言葉に、今までずっと心に付いて離れなかった闇が、少しずつ溶かされていく。
「先輩っ、うっ…、うわぁぁぁんっ」
先輩にの腰に手を回して、小さな子供のように声を上げて泣いた。止まることを知らない涙は、先輩のYシャツに染み込んでいく──…。
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