12695人が本棚に入れています
本棚に追加
「それはっ、その……っ」
覚悟はしてたけど、いきなり核心を突かれたので心臓がドキッと跳ね上がった。
私の方に近付いてくる先輩になにか言わなきゃと一生懸命言い訳を考えるけど、軽くパニックになっている頭ではやっぱり思いつかなくて。
「あっ……、もう授業始まっちゃうからっ、私行かないといけな(ドンッ
質問の答えとは全く関係ない事を言い、そしてどんどん近付いてくる先輩から距離をとろうと後退るけど、後ろにはすぐ壁があり先輩が私を捕まえるのにそう時間は掛からなかった。
逃げないように私の両手を掴み壁に動けないよう縫いつけ、膝を脚と脚の間にいれる。
恐る恐る下から見上げた先輩の顔は、形のいい眉を寄せて目を細めていた。誰がどう見てもやっぱり怒っているようにしか見えなくて。
「答えて」
「…っ」
短くそう答えた先輩の声のトーンの低さに思わずビクッと身体が震える。
「俺の事嫌いになったのか」
「ちがっ」
「じゃななんで」
なかなか先を言わない私に苛立っているのか、手首を締め付ける先輩の手がどんどんと強くなっていく。
「いっ……」
痛みに耐えるようにギュッと目を瞑る。
その様子を見た先輩が悪いと一言、強く握っていた手首を離す。
「泣くほど俺が嫌なのか。もういい。……悪かった」
「えっ?」
頭をひと撫でしてから先輩は私から離れていった。
最後に見た先輩の顔がとても悲しそうで、強く胸を締め付けた。
最初のコメントを投稿しよう!