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「ぐあ!?」
出来なかった――いや、させて貰えなかった。
あれだけの打撃を食らっておきながら、蓮を腕で薙ぎ払ったのだ。
蓮は地面に打ち付けられ、そのまま数メートルを転がる。
「蓮!」
炎は体格に似合わず、素早い。
すでに、彼の両手には剣があり、それは俺に向かって振りかぶられていた。
「隆之君!逃げて!」
比奈の叫び声が聞こえる。
車に轢かれる直前って、こんな感じなのかな。
まるで、時間に取り残されたかのように世界はゆっくりと動いていた。
動こうとしても体が動かない。
スキルを使おうとしても頭が働かない。
ゆっくりと剣が動く。
もう、間に合わない。
心臓の鼓動までゆっくりとしているように感じた。
剣はもう目の前。
目を閉じることさえ出来ない。
そして――
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