強敵

7/29
前へ
/550ページ
次へ
「ぐあ!?」 出来なかった――いや、させて貰えなかった。 あれだけの打撃を食らっておきながら、蓮を腕で薙ぎ払ったのだ。 蓮は地面に打ち付けられ、そのまま数メートルを転がる。 「蓮!」 炎は体格に似合わず、素早い。 すでに、彼の両手には剣があり、それは俺に向かって振りかぶられていた。 「隆之君!逃げて!」 比奈の叫び声が聞こえる。 車に轢かれる直前って、こんな感じなのかな。 まるで、時間に取り残されたかのように世界はゆっくりと動いていた。 動こうとしても体が動かない。 スキルを使おうとしても頭が働かない。 ゆっくりと剣が動く。 もう、間に合わない。 心臓の鼓動までゆっくりとしているように感じた。 剣はもう目の前。 目を閉じることさえ出来ない。 そして――
/550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加