ひび

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佳織、詩織、蓮は弾けたように駆け出す。 炎は何かを呟き、目を閉じた。 だが、【神眼】を使っていない今、時は止まることもなく、岩は初速を保ったまま水樹の方に向かう。 何故、【神眼】を使わなかったのだろう。 今から使っても、すでに遅い。 ――時間はゆっくりと動いていた。 岩は正確に水樹の後頭部を捕らえる。 佳織や詩織や蓮、反対側にいる比奈と香奈の声がいっぺんに聞こえた。 水樹の翼は羽ばたく事をやめてしまった。 ゆっくり水樹の体が谷底に吸い込まれて行く。 その手に、何かをにぎりしめたまま。
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