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遠山の体は谷に向かって傾いたまま止まっている。
その胸倉を掴み、そのまま遠山の体を宙に持ち上げ、谷から少し離れる。
片方の手に剣をにぎりしめたまま。
そして―――
辺りは色と音を取り戻した。
「……え?」
と何が起こったのか分からないような、そんな間の抜けた声が聞こえた。
ズブリ
遠山の腹に剣がくい込む。
「あ………あ……。
やだ……やだ……
しに……たく……ない…」
剣を引き抜く。
流れ出る深紅の血。
「隆之いいいいい!!!」
突然の怒声ののち、顔を殴り付けられる感触があった。
倒れはしなかったものの、遠山を地面に落としてしまった。
遠山はすでに息絶えていたようで、光となって消えてしまった。
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