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人と接する事を避けていた、はずなのに、気が付けば隆之くん達と居ることに安心感を覚えるようになった。
最初の内はいつ裏切られても良いように、警戒を怠ることはなかった。
どうせまた、すぐに裏切られるだろう。
軽く疑心暗鬼に陥っていたのかもしれない。
だけど、隆之くんは裏切る気配がなく、鈴木静との言い争いの時も私を『大切な仲間』と言ってくれた。
人の温かさを知ってしまったから――
死ぬ事が余計辛く、怖くなる。
真っ暗な谷にどんどん吸い込まれてゆく。
後、数秒で私は死ぬだろう。
体に力が入らないので、飛ぶことも出来ない。
私ができる事と言ったら、目を閉じて皆の顔を思い浮かべること位だった。
綾小路くん、詩織さん、お姉様。
付き合いは短かったけど紅さん、比奈さん、香奈さんの顔も浮かんでくる。
そして隆之くん。
皆、死なないで……ね。
最後の力を振り絞り、手の中にあるペンダントを強く、固く握り閉める。
さようなら、皆。
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